正法眼蔵を読み解く

現代人による正法眼蔵解説

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

正法眼蔵身心学道について    竹 村 仁 秀

正法眼蔵身心学道について 竹 村 仁 秀 永平高祖道元褝師は主著「正法眼蔵」の中に「身心学道」の一巻を著わし、仏家修行者の真実の学道について説示しておられる。 学道と云うならば、平常は心の学道の如く考えられ、学道その物をして心の成長、発展の問題…

『正法眼蔵』 「諸悪莫作」 論考    佐 藤 悦 成

『正法眼蔵』 「諸悪莫作」 論考 佐 藤 悦 成 はじめに 『正法眼蔵』「諸悪莫作」の巻に記される莫作の形成は、道元禅師の証す単伝の正法が、如何にして禅師自身に体得され、その思想の原点が那辺にあるかを理解せねば通俗的・表象的理解に留まることになろ…

『正法眼蔵諸悪莫作』 と褝戒思想     黒 丸 寛 之

『正法眼蔵諸悪莫作』 と褝戒思想 黒 丸 寛 之 日本曹洞禅における褝戒思想は、江戸中期に卍山が『禅戒訣』『対客閑話』を著してより、賛否両説の種々の論議を重ねた後、面山の『大戒訣』、指月の『禅戒篇』等を経て、万仭の『褝戒鈔』に至って大成されたと…

『正法眼蔵抄』 と天台本覚法門    山 内 舜 雄

『正法眼蔵抄』 と天台本覚法門 山 内 舜 雄 一 先に、道元褝と天台本覚法門との関係を詳究したのであるが(1)、その目途とするところは、道元禅の特質を、どの程度まで日本天台へと遡及させることが可能か、ということであった。 すなわち、道元禅師叡岳…

正法眼藏抄の成立とその性格    鏡 島 元 隆

正法眼藏抄の成立とその性格 鏡 島 元 隆 一 正法眼蔵抄は道元禅師の弟子、詮慧が道元禅師から直接聞いたものを書き留めた聞書を基にして、詮慧の弟子の経豪が更に註釈を加えたものといわれ、畧して御抄と称されるものであるが、正法眼蔵の註釈書としてはも…

『正法眼蔵抄』「諸悪莫作聞書」に関する問題について    倉 石 義 範

『正法眼蔵抄』「諸悪莫作聞書」に関する問題について 倉 石 義 範 『正法眼蔵』の最古の注釈書「正法眼蔵抄」の中に、「私云」を冠する注釈が見られる。 この形式をもっ注釈を含む巻を挙げると、仏性、諸悪莫作、説心説性、仏道、他心通のそ れぞれの巻であ…

『正法眼蔵』 「諸悪莫作」 論考     佐 藤 悦 成

『正法眼蔵』 「諸悪莫作」 論考 佐 藤 悦 成 はじめに 『正法眼蔵』「諸悪莫作」 の巻に記される莫作の形成は、道元禅師の証す単伝の正法が、如何にして禅師自身に体得され、その思想の原点が那辺にあるかを理解せねば通俗的・表象的理解に留まることになろ…

『説心説性』『自証三昧』考      石  井  修  道

『説心説性』『自証三昧』考 石 井 修 道 一 は じ め に 大慧宗杲(一〇八八―一一六三)を批判した道元の著作に『説心説性』と『自証三昧』の二巻があることはよく知られている。その説示は共に吉峰寺であり、年次の記載に寛元元年と寛元二年の一年の差があ…

道元禅師における「説心説性」の定義について     石 井 清 純

道元禅師における「説心説性」の定義について 石 井 清 純 道元禅師(一二〇〇―一二五三)は、『正法眼蔵』「説心説性」巻において、「説心説性」という言葉の解釈を媒体に、大慧宗杲(一〇八九―一一六三)批判を展開している。しかし、その一方で、大慧の語…

『礼拜得髄』 考       石井修道

『礼拜得髄』 考 石井修道 一 はじめに 『礼拜得髄』は 一種類の写本が現存し、 一般に (a)短文本と (b) 長文本と通称されて区別されている 短文本は七十五巻本の第二十八に編集され、長文本は永平寺所蔵の二十八巻本 (秘密正法眼蔵と呼ばれる) に収められて…

「現成公案」 の意味 石 井 清 純

「現成公案」 の意味 石 井 清 純 「現成公案」なる語は、中国唐代の禅者、睦州道明(生没年不詳)をその嚆矢とする。そしてこの語は、その後、多くの禅宗祖師によって拈弄され、燈史や語録の中に散見され、さらに日本において、曹洞系の禅を伝来した、道元禅…

『正法眼蔵』「現成公案」の巻の主題について 石 井 清 純

『正法眼蔵』「現成公案」の巻の主題について 石 井 清 純 はじめに 『正法眼蔵』「現成公案」の巻は、天福元年(一二三三)八月に著された。道元禅師の著作の中でも初期の選述にあたる。そして、この巻が七十五巻本の第一番目に位置し、かつ『正法眼蔵聞書抄…

現成公案の意義 古 田 紹 欽

現成公案の意義 古 田 紹 欽 一 道元は正法眼藏の隨處に現(見)成の語を用ひたが、公案との關係に於て 「見成の公案」 (正法眼蔵、坐禪箴・諸惡莫作) とか、「見成する公案」(同、空華・授記)とか、「見成せる公案」(同、諸悪莫作)とか、「公案の見成」(同)と…

道元禅師の「海印三昧」観について 菅 野 優 子

道元禅師の「海印三昧」観について 菅 野 優 子 一 研究の目的 道元禅師(一二〇〇―一二五三)の著作『正法眼蔵』「海印三昧」巻(以下、「海印三昧」巻と略記)に、二度引かれる句が存在する。その句は、次のように見られる。 佛言、但以衆法、合成此身。起…

『正法眼蔵有時』 考 鈴木 格禅

『正法眼蔵有時』 考 鈴木 格禅 一 『正法眼蔵有時』は、古来より難解な巻として知られ、また、「存在と時間」に関する哲学的思惟の、一つの極限を示す眼蔵中の白眉として、珍重せられてきた。 しかしそれが、単に「存在と時間」 の問題を解明する思弁の書で…

『正法眼蔵抄』『授記』の巻について 石 島 尚 雄

『正法眼蔵抄』 の考察 ―特に『授記』の巻についてー 石 島 尚 雄 一、序 私は、拙稿『道元褝師と引用天台典籍の研究(1)』で、『正法眼蔵抄』の中には、『法華経』あるいは天台教学と関連性がある巻があることを摘指した。今回は、それを受けて『授記』の…

『仏祖』『嗣書』『面授』考 石井  修道

『仏祖』『嗣書』『面授』考 石井 修道 一 はじめに 曹洞宗秋田県宗務所・禅センター主催の「講座『祖録に親しむ』」で、二十八巻本正法眼蔵の講義を継続している。平成十九年十一月三十日に第十二回目を迎えた時に『嗣書』となった。講義の準備の為に桜井秀…

『正法眼蔵』仏性巻における心について 米 野 大 雄

『正法眼蔵』仏性巻における心について ―特に発心について― 米 野 大 雄 一 問題の所在 道元(一二〇〇~一二五三)は質多心・汗栗多心・矣栗多心の三心説を採用(1)したことが知られている。その中でも特に質多心に関して、慮知心・慮知念覚心という語を用い…