正法眼蔵を読み解く

現代人による正法眼蔵解説

道元禪の信決定について   酒井 得元

道元禪の信決定について 酒井 得元 一 常識的に、信仰ということが、褝とは全く別のことのように、考えられている。つまり信仰と禅とを別の在方であるとする、これらの人達は、褝を結局、悟りを開くためのものにしてしまっている。したがって、そこでは悟り…

退任記念講演 駒沢大学と私     酒井 得元

退任記念講演 駒沢大学と私 酒井 得元 私は昭和二十四年から、この駒沢大学に御厄介になっております。それで、ちょうど三十八年間、御厄介になったことになります。今年、満七十五歳になりましたから、ちょうど私の人生の半分をこの駒沢大学で送らせて頂い…

永平広録について  酒 井 得 元

永平広録について 酒 井 得 元 一 『永平広録』 についてお話をいたします。 道元禅師の著書というものを、 大別しますと、『正法眼蔵』 と 『永平広録』 ということになります。前者の方は世間に知られていまして、 皆にも読まれ、 研究者も出ております。 …

哲学・神学から仏教へ 末木 文美士

哲学・神学から仏教へ 末木 文美士 一、哲学と神学 「現象学の神学的転回」と呼ばれる一連の動向の中で、哲学と神学の距離は一挙に縮まり、哲学の自立性に大きな疑問が付されるようになった。かつて哲学は「神学の侍女」としてその限界の中に自足していたの…

親鸞像の形成 末木 文美士

親鸞像の形成 ︱︱ 親鸞の見た親鸞︑惠信尼の見た親鸞 ︱︱ 末木 文美士 はじめに 日本佛敎の特徴といえば︑敎理な問題以に︑僧侶の肉食妻帶という現象がすぐに指摘される︒妻帶僧はチベット系佛敎の一部や︑民地時代に日本から導入された韓國佛敎の一部にも…

酒井得元関係資料

酒井得元関係資料 第71次眼蔵会 昭和52年6月10日から3週間 酒井得元 慶福寺 「現成公案」巻より 現成公按開講偈 講師 酒井得元 歩歩綿綿幾尋枝。総見無常直下知。十二時中真実体。来来去去好便宜。 仏性巻閉講偈 同 長空不礙展神道。入草伝風万象中…

清涼山 天龍寺略史

清涼山 天龍寺略史 青園謙三郎 著 松岡藩の創設 清涼山天龍寺は松岡藩の初代藩主・松平昌勝によって建立された。従って天龍寺の略史について触れようとすれば、まず松岡藩の創設に関するいきさつから始めなければならない。 松岡へ藩が 設けられたのは江戸時…

「雲巌大悲手眼」をめぐる『碧巌録』と『正法眼蔵』   末木文美士

古則解釈の両方向 「雲巌大悲手眼」をめぐる『碧巌録』と『正法眼蔵』 末木文美士 一、文字禅・看話禅・道元 宋代になると、唐から五代にかけての禅師たちの言動が古則として聖典化され、それに参ずるという禅門 の修行法が確立する。その第一歩は、文字禅と…

仮名『正法眼蔵』の成立過程と編集    石井修道

仮名『正法眼蔵』の成立過程と編集 石井修道 一 はじめにー発表の機縁 二〇一六年一二月一六日にフランス国立東方学院のフレデリック・ジラー( FrédéricGirard )先生か ら、パリで講演をしてみないかとメールでお誘いを受けた。ヨーロッパに一度も行ったこ…

道元の無仏性    松岡由香子

道元の無仏性 松岡由香子 禅宗は、おうおう人には仏性があるということを自覚させる宗教、あるいは仏性に目覚めさせる、あるいは仏性を見るという体験をする宗教と思われている。たしかにそのように説き、そのような体験を求める禅もあるだろうが、道元はそ…

道元と永平寺

道元と永平寺 『福井県史』通史編2中世より抜書(一部改変) 一般に栄西が中国より禅を伝えたことをもって日本禅宗の出発点とするが、「元亨釈書」や「延宝伝燈録」などの僧伝や「興禅記」(無象静照著)・「将来目録」(入唐求法者が持ち帰った書物等の目録…

修 証 義を考察する ―正法眼蔵から読み解くー

修 証 義を考察する ―正法眼蔵から読み解くー 第一章 総 序 生を明らめ死を明らむるは仏家一大事の因縁なり、生死の中に仏あれば生死なし、 但生死即ち涅槃と心得て、生死として厭ふべきもなく、涅槃として欣ふべきもなし、 是時初めて生死を離るる分あり、…

瑩山紹瑾ー坐禪用心記

坐禪用心記 洞谷沙門瑩山紹瑾撰 夫坐禪者。直令人開明心地安住本分。是 名露本來面目。亦名現本地風光。身心倶脱落。坐臥同遠離。故不思善不思惡。能超越凡聖。透過迷悟之論量。離却生佛之邊際。故休息萬事及放下諸縁。一切不爲。六根無作。 夫れ坐禪は直に…

聖典を読む―『臨済録』―鎌 田  茂 雄ー

聖典を読む―『臨済録』― 東京大学教授 鎌 田 茂 雄 一九二七年、神奈川県鎌倉市生まれ。帝国陸軍軍人より復員後、円覚寺で参禅し、駒澤大学仏教学部に進む。その後、東京大学大学院に進み、華厳学を専攻した。その後、東京大学教授となり、NHKの「こころの時…

世界史の中の聖徳太子 中 村 元

世界史の中の聖徳太子 東方学院院長 中 村 元 明治四四年島根県松江市出まれ。日本を代表する哲学者、仏教学者。在家出身でありながらも、仏教思想にとどまらず、西洋哲学にも幅広い知識をもち思想における東洋と西洋の超克を目指していた。東京大学卒業。長…

釈尊の最後の旅 中 村 元

釈尊の最後の旅 東方学院院長 中 村 元 一九一二(大正元)年、松江市生まれ。東京帝国大学文学部印度哲学梵文学科卒業。東京大学名誉教授。インド哲学を中心に、幅広くかつ超人的な仕事ぶりで知られ、海外からも高い評価を得た。旺盛な学術研究・教育活動の…

清風白雲を送るー大智禅師を偲ぶー 水 野 弥穂子

清風白雲を送るー大智禅師を偲ぶー 元東京女子大学教授 水 野 弥穂子 大正十年東京生まれ。東北大学法文学部国語科卒。国立国語研究所所員、駒沢大学教授、東京女子大学教授を経て、昭和六十二年退任。「正法眼蔵」を中心とした難解な道元禅師の現代語訳と註…

ブッダの人と思想①われ一切世間に違わず 中 村 元

ブッダの人と思想①われ一切世間に違わず インド哲学者 中 村 元 1912年(大正元年)島根県松江市生まれ。1931年、東京高等師範学校附属中学校(現・筑波大学附属中学校・高等学校)卒業。1934年、旧制第一高等学校卒業。1936年(昭和11年)、東京帝国大学文…

ブッダの人と思想②不死の門は開かれた 中 村 元

ブッダの人と思想②不死の門は開かれた インド哲学者 中 村 元 き き て 草 柳 隆 三 語 り 石 澤 典 夫 石澤: 「こころの時代」では、毎月、中村元「ブッダの人と思想」セレクションを放送しています。これは一九九五年に、十二回にわたって放送されたシリ…

ブッダの人と思想③法輪を転ず 中 村 元

インド哲学者 中 村 元 き き て 草 柳 隆 三 語 り 石 澤 典 夫 石澤: 「こころの時代」では、毎月中村元「ブッダの人と思想」セレクションを放送しています。これは一九九五年に、十二回にわたって放送されたシリーズから、七本を選んで再編集したもので…

ブッダの人と思想④一切にわがものなし 中 村 元

ブッダの人と思想④一切にわがものなし インド哲学者 中 村 元 き き て 草 柳 隆 三 語 り 石 澤 典 夫 石澤: 「こころの時代」では、毎月中村元「ブッダの人と思想」セレクションを放送しています。これは一九九五年に、十二回にわたって放送されたシリー…

ブッダの人と思想⑤善き友とともに 中 村 元

ブッダの人と思想⑤善き友とともに インド哲学者 中 村 元 き き て 草 柳 隆 三 語 り 石 澤 典 夫 石澤: 「こころの時代」では、毎月中村元「ブッダの人と思想」セレクションを放送しています。これは一九九五年に、十二回にわたって放送されたシリーズか…

ブッダの人と思想⑥空飛ぶ鳥に迹なし 中 村 元

ブッダの人と思想⑥空飛ぶ鳥に迹なし インド哲学者 中 村 元 き き て 草 柳 隆 三 語 り 石 澤 典 夫 石澤: 「こころの時代」では、毎月中村元「ブッダの人と思想」セレクションを放送しています。これは一九九五年に、十二回にわたって放送されたシリーズ…

ブッダの人と思想⑦自らを灯とせよ 中 村 元

ブッダの人と思想⑦自らを灯とせよ インド哲学者 中 村 元 き き て 草 柳 隆 三 語 り 石 澤 典 夫 石澤: 「こころの時代」、中村元「ブッダの人と思想」セレクションです。これは一九九五年に、十二回にわたって放送されたシリーズから、七本を選んで再編…

東洋の心を語る ⑫人間の願い    中 村 元

東洋の心を語る ⑫人間の願い 東方学院院長 中 村 元 駒沢大学教授 奈 良 康 明 奈良: 「東洋の心を語る」ということで放送してまいりましたけれども、早いもので、第十二回目、最終回になります。昨年の四月にスタート致しまして、アッという間に一年が過ぎ…

東洋の心を語る ⑪和の精神    中 村 元

東洋の心を語る ⑪和の精神 東方学院院長 中 村 元 法隆寺執事長 高 田 良 信 ナレーター: 奈良斑鳩(いかるが)の里。世界最古の木造建築、法隆寺の伽藍(がらん)が並んでいます。五重塔や金堂のある西院(さいいん)を過ぎると、参道の先には夢殿のある東院(と…

東洋の心を語る ⑩山色清浄身    中 村 元

東洋の心を語る ⑩山色清浄身 東方学院院長 中 村 元 駒沢大学教授 奈 良 康 明 奈良: 「東洋の心を語る」ということで、昨年の四月から毎月一回、いろいろなテーマの中でお話を伺ってきたわけでありますけれども、今月はその第十回になります。テーマが「山…

東洋の心を語る ⑨苦を抜き楽を与える    中 村 元

東洋の心を語る ⑨苦を抜き楽を与える 東方学院院長 中 村 元 駒沢大学教授 奈 良 康 明 奈良: 毎月一回「東洋の心を語る」ということで放送してまいりました。早いもので九回になります。この四ヶ月から始めまして、十二月歳末ということで、間もなく新年が…

東洋の心を語る ⑧今を生きる    中 村 元

東洋の心を語る ⑧今を生きる 東方学院院長 中 村 元 駒沢大学教授 奈 良 康 明 奈良: この四月に始まりました「東洋の心を語る」というシリーズも、本日で第八回目になります。その時々にテーマを選びながら、仏教を中心にしながらも、広く東洋の心、東洋の…

東洋の心を語る ⑦我深く汝等を敬う    中 村 元

東洋の心を語る ⑦我深く汝等を敬う 東方学院院長 中 村 元 駒沢大学教授 奈 良 康 明 奈良: 「東洋の心を語る」というシリーズの第七回目になります。私たち人間が社会の中を生きていくのに、さまざまな原則があるわけなんですけれども、その中でやはり一番…