正法眼蔵を読み解く

現代人による正法眼蔵解説

東洋の心を語る ⑥飛ぶ鳥に迹なし    中 村 元

東洋の心を語る ⑥飛ぶ鳥に迹なし 東方学院院長 中 村 元 駒沢大学教授 奈 良 康 明 奈良: 「東洋の心を語る」というシリーズの第六回目になります。本日のテーマは「飛ぶ鳥に迹なし」ということでございます。鳥が空を飛びます。私たち人間が人生の中を生き…

東洋の心を語る ⑤毒矢のたとえ    中 村 元

東洋の心を語る ⑤毒矢のたとえ 東方学院院長 中 村 元 駒沢大学教授 奈 良 康 明 奈良: 「東洋の心を語る」というシリーズでございまして、毎回仏教を中心にしながら、東洋の英知というものをいろいろな形で探ってまいっております。本日はその第五回という…

東洋の心を語る ④三つのおごり    中 村 元

東洋の心を語る ④三つのおごり 東方学院院長 中 村 元 駒沢大学教授 奈 良 康 明 奈良: 「東洋の心を語る」というシリーズの第四回目になります。毎回釈尊の教え、仏教というものを中心にしながら、およそ人間が人間としてある限り誰にでも当て嵌まるという…

東洋の心を語る ③汝自身を知れ    中 村 元

東洋の心を語る ③汝自身を知れ 東方学院院長 中 村 元 駒沢大学教授 奈 良 康 明 奈良: 「東洋の心を語る」というシリーズの第三回目になります。本日のテーマは「汝自身を知れ」ということでございます。「汝自身を知れ」、結局自分とは一体何であろうか。…

東洋の心を語る ②中道を歩む    中 村 元

東洋の心を語る ②中道を歩む 東方学院院長 中 村 元 駒沢大学教授 奈 良 康 明 奈良: 東洋思想への関心が高まる中に、「東洋の心を語る」ということで、毎月一回放送しております。本日はその第二回でありまして、「中道と歩む」ということでございます。「…

東洋の心を語る ①開かれたこころ    中 村 元

東洋の心を語る ①開かれたこころ 東方学院院長 中 村 元 明治四四年島根県松江市出まれ。日本を代表する哲学者、仏教学者。在家出身でありながらも、仏教思想にとどまらず、西洋哲学にも幅広い知識をもち思想における東洋と西洋の超克を目指していた。東京大…

ともに生きること     徳林寺住職  高 岡秀 暢

ともに生きること 徳林寺住職 高 岡 秀 暢 ナレーター: 名古屋市にある曹洞宗(そうとうしゆう)の禅寺徳林寺(とくりんじ)。去年の春開かれた花まつりの様子です。四月八日とされる釈迦の誕生日を祝う祭りです。 住職の高岡秀暢さん。伝説によると釈迦の母マ…

仏の世界を生きる 村 上 光 照

仏の世界を生きる 安楽菴主 村 上 光 照 昭和十二年高松生まれ。京都大学大学院で湯川秀樹博士の指導を受け、原子物理学を研究。澤木興道老師により得度を受ける。長い間寺を持たず、托鉢と日本各地とヨーロッパでの坐禅指導により日々を過ごしている。 き …

一処不住の禅僧 村上  光照

一処不住 村 上 光照 昭和十二年高松生まれ。京都大学大学院で湯川秀樹博士の指導を受け原子物理学を研究。沢木興道老師により得度を受ける。寺を持たず、托鉢と日本各地とヨーロッパでの坐禅指導により日々を過ごしている。 ききて 金 光 寿 郎 村上: 私た…

禅の語録を読む 小 川 隆

禅の語録を読む 駒澤大学教授 小 川 隆 一九六一年、岡山市生まれ。一九八三年、駒澤大学仏教学部禅学科卒。一九九○年、同大学院仏教学専攻博士課程満期退学(一九八六―一九八九年、北京大学哲学系高等進修生)。現在、駒澤大学総合教育研究部教授。 き き て…

坐禅のすすめ―普勧坐禅儀―酒 井 得 元

坐禅のすすめ―普勧坐禅儀― 曹洞宗参禅道場師家会会長 酒 井 得 元 明治四五年 名古屋市に生まれる。昭和十年 駒沢大学仏教学科卒業。同一一年 京都紫竹林学堂に入り、京都大学文学部哲学科専科に三年間在学。同一四年春 大本山総持寺に安居、後堂であった沢…

『碧巌録』を読むヒント  末木文美士

『碧巌録』を読むヒント 末木文美士 一 禅籍を訳すということ 「禅問答」といえば、わけのわからないものの代名詞のように使われる。確かに禅は言語分別を超えることを目標とするから、わざわざ通常の論理では通用しないようなことを言うので、常識では理解…

麻三斤 入矢義高

麻三斤 入矢義高 僧、洞山に問う、「如何なるか是れ仏」。 洞山云く、「麻三斤」。 周知のように禅門では古来はなはだ有名な公案となって、『雪贅頒古』『碧巌録』『無門関』『空谷集』などで取り上げられ、また多くの禅僧による拈頌が伝えられている。この…

語録の言葉と文体 入矢義高

語録の言葉と文体 入矢義高 私はこれから禅の語録について、もっぱらその言葉と文体について述べようと思う。しかも、もっぱら唐代の語録を中心資料として述べることにしたい。というのは、唐代の禅には、宋以後の禅に見られるような宗派の別によるセクショ…

因縁の考察  酒井得元

因縁の考察 酒井得元 因縁ということは、「阿頼耶識與雑染法互爲因縁、如炷與焔展轉生焼、又如束蘆互相依住唯依此二建立因縁、所余因縁不可得故」(成唯識論第二春)(「大正蔵」三一・八下)にもある如く、我々の生命現象の基本的購造を説明する概念として、…

存在と佛性   酒井得元

存在と佛性 酒井得元 一 大乗論部の破執分の論理的根幹をなすものは、一般的な性の概念を破して、無性を明かすことであつた。かくて、古來の佛者の努力の方向が、結局、この一點に終始していたということは、周知のところであろう。何故にこの一般的な性の概…

佛性と時節  酒井得元

佛性と時節 酒井得元 佛性は、佛教を學ぶものの、先ず第一に問題としなければならぬことで、この性格を明確にすることが、その人の佛道の方向を明確にする。故に、古來、立教開宗の祖と言われる人達には、それぞれの佛性論がものされて來た。そもそも佛性と…

法界の論理的考察 酒井得元

法界の論理的考察 酒井得元 論理は思索の軌道である。論理に導かれて思索進むのか、それとも思索が論理を生むのか、その邊のことを考えるのは徒勢である。何故ならば、思索は論理を媒介としなければあり得ないが同時に、その思索が論理を生む。故に思索と論…

佛性の性格  酒井得元

佛性の性格 酒井得元 成佛を最後的なものとする佛教者は、自己を窮極にまで掘下げ、成佛という事實に到達すべく努力するものである。そして成佛とは如何なるものかが、第一に與えられる課題であつた。それはやがて本來成佛の自覚にまで具體化され、遂に大乗…

酒井得元 提唱 三昧王三昧

正法眼蔵提唱 三昧王三昧 提唱(一) 酒井得元 面山述讃第二十一 三昧王三昧 述して曰く、三昧王三昧は九年面壁是なり。是を仏仏の要機祖祖の機要と謂う。二乗外道及び趙宗以来の異計の者は干茲に暗し。讃に言く、高して上無く。広うして涯なし古仏の軌範。…

酒井得元 提唱 袈裟功徳

正法眼蔵 袈裟功徳 提唱(一)酒井得元 ※原文 「義雲頌著」第四十一袈裟功徳 非色非空。霊山付属線連金、火不曾焼一提不起。 此土西天何隔針、古今苗秀福田地。 ※提唱 今回から『袈裟功徳』の巻に入つてまいります。此の袈裟というのは前の巻に『伝衣』の巻…

正法眼蔵随聞記

正法眼蔵随聞記 一 01示に云く、はづべくんば明眼の人をはづべし。予、在宋の時、天童浄和尚、侍者に請ずるに云く、「外国人たりといへども元子器量人なり。」と云ってこれを請ず。 予、堅く是を辞す。その故は、「和国にきこえんためも、学道の稽古のためも…

酒井得元 著作述 一覧

酒井得元 著作述 一覧 駒沢大学と私(退任記念講演)―dl可― 駒沢大学仏教学部論集 (18), p1-22, 1987-10 永平広録について―dl可― 禅研究所紀要 (11), p1-31, 1982 天台止観と只管打坐―酒井得元老師著作集Ⅱ― 宗学研究 (18), p243-250, 1976-03 〔書評〕『訳註禅…

吉田郡について

吉田郡について 『福井県史』通史編2中世より抜書(一部改変) 吉田郡の初見は建久元年で(資2 宮内庁書陵部 (その他)二号)、その成立は平安末期であろう。郡名の由来は詳らかでないが、いかにも中世的な佳名である。足羽郡と対照的に領域的で大きな荘…

吉峰寺に関する論考

吉峰寺に関する論考 一 二谷 正信 はじめに 道元禅師に関わる著作・論文等は、これまで先輩諸氏等によって数限りなくといっていいほど発表・刊行されていて、あえて私などが論ずる事もなさそうに思われるのですが、特に入越後に於ける動静について禿筆を執っ…

泰澄の伝記について

泰澄の伝記について 『福井県史』通史編より抜書(一部改変) 白山信仰の開創者として、奈良時代に活躍したとされる泰澄については、諸本に種々の伝記が残されている。そのうち最古の成立とされ、泰澄の行状について最も具体的な内容の知られるのは『泰澄和…

泰澄和尚

織田文化歴史館ホーム > 泰澄より抜書(一部改変) 1 泰澄和尚とは (1)泰澄和尚とは 『泰澄和尚伝記』によると、泰澄は越前国麻生津の三神安角を父、伊野氏の女性を母として、天武天皇11年(682)6月11日に生まれた。幼い頃から普通の児童とは異なり、…

天龍寺指南録

天龍寺指南録 1頁(以下略) 当院開山斧山和尚・諱号宝鈯・ 越中射水郡人也・其家世々・為 猪股氏之股肱・薙髪之後・有故 厚蒙清涼院殿撫育・因是前中 書・法名鉄関公・創立当院・請為 開祖・初住干武陽品川県・天龍 寺而為第四世矣・天龍者・駿府 斧山和尚…

酒井得元 龍吟提唱

、 龍吟提唱 義雲頌著 第五十一龍吟 是什麼章句 吟曲付曾落五音、花開枯木帯春心、 宮商角羽同和処、此引調高誰敢侵。 面山述賛 第五十一龍吟 述云 三十二相是枯木、六十四音是龍吟、 了之回光則六凡四聖無分外底法、 賛言、一代時教、枯木龍吟、鴉鳴雀噪 總…

酒井得元 坐禅箴 提唱

坐禅箴 提唱 昭和49年5月24日 宗門の道元禅師の坐禅が「どうあらねばならないか」と云う事が一番はっきりと言われているのがこの「坐禅箴」の巻です。坐禅箴の次は内容を補足する形式で「海印三昧」と続き、まことに具合よく配列され有難いことです。 …